生成AIの研修を助成金で受けたい、という相談が増えています。よく名前が挙がるのが、厚生労働省の人材開発支援助成金にある「事業展開等リスキリング支援コース」です。
ただ、この制度には2つの大事な前提があります。1つは、期間限定の制度だということ。もう1つは、2026年8月3日の改正で、対象にならない研修の線引きがはっきりしたことです。
生成AI研修の助成金は、研修を売る側の私たちにも関わる話で、改正の資料を読み直して提案の中身を変えました。2026年10月16日時点で、厚生労働省の公表資料から確かめた内容をまとめます。
問い いま申し込めば、まだ間に合うのか
先に期限の話をします。
厚生労働省のパンフレットでは、事業展開等リスキリング支援コースは「令和4年〜8年度の期間限定の助成金」とされています。令和8年度の終わり、つまり2027年3月末までの時限措置です。
さらに、研修を始める前に、計画届(誰に、どんな研修を、いつ何時間行うかを事前に届け出る書類)を労働局へ出す必要があります。期限は、訓練開始日の6か月前から1か月前までです。研修を始める日から逆算すると、遅くとも開始の1か月前には書類が出ている必要があります。準備の時間を考えると、実施したい時期の2〜3か月前には相談を始めておきたいところです。
調べてわかった 助成率と上限
助成の中身は、研修の費用(経費助成)と、研修を受けている時間の給料(賃金助成)の2本立てです。
項目 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
経費助成率 | 75% | 60% |
賃金助成(1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
経費助成の上限(1人1訓練、10時間以上100時間未満) | 30万円 | 20万円 |
中小企業かどうかは、業種ごとの資本金か従業員数で決まります。たとえば小売業なら、資本金5,000万円以下か従業員50人以下です。1つの事業所が1年度に受けられる助成額の上限は1億円です。研修が100時間以上になると、1人あたりの上限は段階的に上がります。
注意したいのがeラーニングです。eラーニングや通信制の研修は経費助成だけで、賃金助成は付きません。上限も中小企業で15万円と低くなります。
8月の改正で何が変わったのか
ここが、生成AI研修に助成金を使うときに一番大事なところです。2026年8月3日以降に出した計画届から、次の2点が変わりました。8月3日より前に出した計画届には、改正前の扱いが残る経過措置があります。細かい条件は、厚生労働省の支給要領(制度の運用ルールをまとめた資料)で確認してください。
1つ目は、対象にならない研修の線引きです。厚生労働省の改正資料には、DX(デジタル技術を使った業務の見直し)に関する研修のうち、職務に間接的に必要な知識の研修や、職業の種類を問わず誰にでも必要な知識の研修は対象外と書かれています。
具体例も載っています。生成AIを使って商品提案書の構成案や文章を作る方法を学ぶ、営業担当者向けの研修は対象。一方で、生成AIを使うための汎用的なプロンプト(AIへの指示文)の作り方を学ぶ研修は、特定の業務への適用を伴わないので対象外です。DXの概念やデジタル技術の概要を学ぶだけの研修も対象外とされています。
さらに、研修の内容に合った人を受講者に選んでいるかも見られます。営業の業務に直結する研修に、関係のない部署の人を参加させると対象外になりえます。
2つ目は、受講回数の上限です。同じ人が1年度に助成を受けられるのは3回までで、そのうちeラーニングは1回までになりました。
私たちが提案を直したところ
改正の資料を読んで、私たちは研修の提案書を2か所直しました。
1つは、冒頭にあった「AIへの指示の出し方」の座学を、受講者の業務の題材に組み込んだ演習に置き換えたことです。汎用的なプロンプトの講義だけを切り出すと、改正後の基準では対象外と判断されるおそれがあるからです。
もう1つは、受講者を選ぶ段階で「どの業務のどの作業を題材にするか」を一人ずつ決めてもらうようにしたことです。誰にどんな研修を受けさせるかを説明できることが、改正後はより大事になりました。
正直なところ、改正前の提案書には、どの会社にも同じ内容を出していた部分がありました。改正は、研修を売る側にとっても、中身を業務に寄せる良いきっかけになったと思っています。
わかった答え 対象になりやすい研修の形
ここまでをまとめると、生成AI研修で助成金を使いやすいのは次のような研修です。
- 10時間以上、OFF-JT(通常の業務から離れて行う研修)として行う
- 受講者の担当業務に直結する題材を扱う
- 受講者を、研修の題材に関係する業務の担当者から選ぶ
- 制度の期限(2027年3月末)を前提に、支給申請までの日程を労働局に確認しながら組む
半日の体験研修のように10時間に届かないものは、それだけでは対象になりません。
残った疑問
1つ、資料からは読み切れなかったことがあります。2027年4月以降、この制度が延長されるのか、別の形に置き換わるのかは、10月16日時点では公表されていません。年度をまたぐ計画を立てるときは、労働局に直接確認してください。
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