現場向けのClaude Code研修を始める前に、情シスの担当者だけで3時間の研修をさせてもらうことがあります。
きっかけは、ある研修先での失敗でした。現場の研修が終わった翌日、受講者から情シスに「Claude Codeを入れたい」「この設定はどうすれば」という問い合わせが一斉に届き、情シスの方が対応しきれなかった。情シスの担当者自身が、Claude Codeを一度も触ったことがなかったのです。
それ以来、情シス向けのAI研修を現場の研修より先に入れるようにしています。この記事では、その3時間で扱っている内容を順に紹介します。
最初の30分 自分で一度動かす
情シス向けの研修でも、最初は現場の研修と同じく、自分でClaude Codeを起動して小さなツールを1つ作ってもらいます。
ここで見てほしいのは、Claude Codeが何に触るかです。Claude Codeは、作業させたいフォルダを決めてから起動し、その中のファイルを扱います。起動したフォルダの中のファイルを読む。書き換える前に許可を求める。コマンド(パソコンに直接出す命令)を実行する前にも許可を求める。この流れを一度見ておくと、後の設定の話がすべて具体的になります。
次の45分 許可の仕組みと、触らせない設定
Claude Codeには、何を聞かずに実行してよく、何を聞いてから実行し、何を禁止するかを決める許可の設定があります。情シスの研修では、ここに一番時間を使います。
演習では、パスワードなどの秘密情報が入ったファイルを読めないようにする設定を、実際に書いてもらいます。設定ファイル(Claude Codeの動き方を決める、決まった場所に置く文字のファイル)に読み取り禁止のルールを書き、Claude Codeに「そのファイルを読んで」と頼んで、断られることを確かめます。あわせて、このルールの限界も伝えます。AIが書いたプログラムが内部でファイルを開く場合には、このルールは効きません。そこまで止めたい場合は、AIが動ける範囲を決めた場所の中だけに閉じ込めるサンドボックスの機能を併用します。
許可の設定の書き方は、別の記事で詳しく解説しています。
もう1つ必ず見せるのが、すべての確認を飛ばして動かすモードです。便利な反面、業務で使うには危険が大きい。このモードを管理者側から使えなくできることを、次の時間につなげます。
次の45分 管理者が設定を配る
人数が増えたら、許可の設定を各自に任せず、管理者が配る形にします。公式には、管理者が配る設定(managed settings)という仕組みがあります。ここに書いた設定は、本人が自分で書いた設定や、作業フォルダごとの設定では上書きできません。
配り方は、各パソコンの決まった場所にファイルを置く方法、MDM(会社のパソコンを一括管理する仕組み)で配る方法、TeamやEnterpriseの管理画面から配る方法が案内されています。研修では、情シスの方がすでに使っている配布の仕組みに合わせて選んでもらいます。
演習では、読み取り禁止のルールと、確認を飛ばすモードの禁止を1つのファイルにまとめて置き、ユーザー側の設定では外せないことを確かめます。
次の30分 データはどこに残るのか
情シスの方から一番多く受ける質問が、入力した内容がどこに残り、何に使われるかです。
公式ドキュメントによると、Claudeの法人向けプラン(TeamやEnterprise)や、API(システムから直接AIを呼び出す契約)などの商用の契約では、送った内容を原則としてモデルの学習に使いません。Anthropic側の保存期間は標準で30日です。
見落とされやすいのが、手元のパソコンに残る記録です。Claude Codeは、会話を後から再開できるように、やり取りの記録を、ユーザーのホームフォルダの中に暗号化しない形で、標準では30日間保存します。期間は設定で変えられます。研修では、このフォルダを実際に開いて中身を見てもらいます。パソコンの返却や廃棄の手順に、このフォルダを入れておく必要があるからです。
最後の30分 現場向けの説明を作る
最後に、現場の受講者に配る1枚の説明を、情シスの方と一緒に作ります。
書くのは、どの契約のアカウントで使うか、扱ってよいデータと扱わないデータ、困ったときの問い合わせ先、の3点です。ひな形は、業務利用ルールの記事に載せています。
この1枚が現場の研修の初日に配られていると、翌日からの問い合わせの数が目に見えて減ります。冒頭の研修先でも、2回目からはこの順番に変えました。情シスの方からは「何を聞かれるかが先にわかっていたので、落ち着いて対応できた」と言ってもらえました。
情シス向けのAI研修を、現場より先に置く理由
情シス向けのAI研修は、現場の研修の付け足しではありません。現場の研修がうまくいくための前提です。
使える環境が整っていて、禁止すべきものが設定で止まっていて、困ったときの窓口がある。この3つを、現場の受講者が研修を受ける前に用意しておく。そのための3時間です。
当メディアの運営会社の研修でも、情シスの方向けの時間を現場の研修と組み合わせてご相談いただけます。



