春の新人研修の計画を立てていた人事の方と、こんな会話をしました。

「今年から、新入社員のAI研修を入れたいんです。若い人のほうがAIに慣れているから、すぐ使えるようになりますよね」

半分は合っていて、半分は違う、と答えました。この記事は、そのときの会話に、ほかの研修先で受けた同じような相談を重ねてまとめています。

「若い人のほうがAIに慣れていますよね」

慣れてはいます。学生のうちからチャットのAIを使ってきた人は多く、話しかけることへの抵抗はほとんどありません。

ただ、仕事でAIを使うときに難しいのは、AIの操作ではありません。何を頼めばいいかを決めることです。そして新入社員は、まだ自分の仕事の中身を知りません。どの作業に時間がかかっていて、どこを自動化すると助かるのかが、まだ見えていない。

ここが、中堅社員向けの研修との一番の違いです。

「では、何から教えればいいんですか」

私たちが新入社員のAI研修で最初にやるのは、仕事を言葉にする練習です。

配属先で最初に任される作業を1つ選び、手順を書き出してもらいます。どのファイルを開き、何をコピーして、どこに貼り、誰に送るのか。書き出してみると、新人自身も「自分はこの作業をちゃんと理解していなかった」と気づきます。

この手順書が、そのままAIへの依頼文になります。Claude Code(チャットで話すAIと違い、パソコンの中でファイルを読み、道具を作るところまでやるAI)に「この手順を自動化するツールを作って」と頼むと、手順が具体的なほど、やり直しが少なく済みます。AIを使う力と、仕事を理解する力が、同じ練習で伸びる。新人研修に入れる意味はここにあると考えています。

「新人ならではのつまずきはありますか」

あります。研修で見てきた中で多かったのは、2つです。

1つは、AIが作ったものを確かめずに使ってしまうこと。集計ツールの合計が合っているかを、元の表と一度も照らし合わせずに提出しそうになった人がいました。AIは間違えることがある、という前提を最初に教えておく必要があります。

もう1つは、社外秘の情報の扱いです。研修では、扱ってよいデータの線引きを、ツールの使い方より先に説明します。会社として決めたルールを新人研修の段階で知っておけば、配属後に迷いません。ルールの作り方は別の記事にまとめています。

「研修は何日くらい必要ですか」

新人研修の中に入れるなら、半日の体験と、配属後の1日の実践に分けるのがおすすめです。

入社直後の半日で、Claude Codeを起動して、小さなツールを1つ作る体験をする。ここではまだ業務の題材は使いません。新人のパソコンへのインストールとアカウントの段取りは、入社前に情シスと決めておいてください。

そして配属から1〜2か月たったころに、自分の業務の題材で1日の実践をします。このころには、何に時間がかかっているかが見えてきているので、題材選びで迷いません。最初の5日間につまずく場所は、非エンジニアの方の記録として別の記事に書きました。

実は、私たちも最初は入社直後の3日間にまとめて詰め込んでいました。業務を知らない時期に業務の題材を求めても、新人は困るだけでした。分けてからのほうが、配属後に使い続ける人が多いと感じています。

「教える側の先輩が気をつけることは」

一番大事なのは、先輩が自分で使って見せることです。

新人がAIで作ったツールを持ってきたとき、先輩がその仕組みに興味を持たないと、新人は使うのをやめてしまいます。逆に「それ、自分の作業にも使えないか」と聞いてくれる先輩がいる部署では、新人のツールがそのままチームの道具になっていきます。

新入社員のAI研修は、新人だけの研修にしないほうがうまくいきます。配属先の先輩が、新人と同じ半日の体験を一度受けておく。これだけで、配属後の会話が変わります。

「研修のあと、新人の手元に何が残りますか」

2つ残ります。1つは、配属先の作業を書き出した手順書。もう1つは、その手順を自動化した小さなツールです。

手順書は、翌年の新人に引き継ぐ資料にもなります。新人研修の成果物を、そのまま部署の引き継ぎ資料として使えるように残しておくと、研修の価値が翌年にもつながります。

会話のあとで決まったこと

その人事の方の会社では、新入社員のAI研修を、入社直後の半日と、配属2か月後の1日に分けることになりました。あわせて、各部署から1人ずつ、先輩にも半日の体験を受けてもらうことにしています。

当メディアの運営会社でも、半日の体験研修を無料で行っています。新人研修への組み込み方もご相談いただけます。