研修の満足度アンケートの評価は高かった。それなのに1か月後、担当の方から「まだ使っているのは、ほんの数人です」と連絡が来る。これまでの研修で何度か経験してきた流れです。この記事では、そうした複数の研修先の話を1つの会社の話としてまとめ直しています。

研修の中身が悪かったのかと思い、受講者の方に話を聞かせてもらいました。

返ってきた答えは、どれも研修の外の話でした。AI研修が定着しない理由は、研修の翌週から始まっていたのです。

翌週、受講者の前に立ちはだかったもの

聞き取りで出てきた話を、多かった順に並べます。

一番多かったのは、会社のパソコンでClaude Code(日本語で頼むとAIが業務用の道具を作る、パソコンに入れて使うソフト)が使えない、でした。研修は研修用のアカウントと環境で受けた。自分の席に戻ると、ソフトを入れる権限がない。情シスに申請したら、承認まで3週間かかると言われた。そのうちに忘れてしまった、という流れです。

二番目は、業務のデータを扱ってよいかがわからない、でした。研修ではダミーのファイルを使った。でも本物の売上表をAIに読ませていいのか、誰に聞けばいいのかわからない。わからないから使わない。

三番目は、作ったものを使い続ける時間がない、です。研修で作った集計ツールは動く。でも月末の忙しい時期に、慣れていない道具を試す余裕はない。結局いつもの手作業に戻った。

どれも、研修の中でいくら上手に教えても解決しない問題でした。

研修の中身が原因だったのは一部だけ

もちろん、研修側にも反省はありました。

その研修では、題材を「よくある業務の例」から選んでいました。受講者が自分の職場に戻ったとき、研修で作ったものと自分の仕事がつながっていなかった。自分の業務の題材で作っていれば、少なくとも「あれを使えばいい」という手がかりは残ったはずです。

いまは、受講者に自分の業務から題材を持ってきてもらう形に変えています。研修の時間割の考え方は、別の記事に書きました。

定着した会社が、研修の前にやっていたこと

一方で、研修の後も使い続ける人が多かった研修先もあります。違いは、研修の前の準備にありました。

まず、研修の前に情シスと話がついていました。受講者のパソコンにClaude Codeを入れること、会社としてClaudeの法人向けプラン(TeamやEnterprise)で契約して使うこと、扱ってよいデータの範囲。これが研修の初日の時点で決まっていたので、翌日から自分の席で使えました。

次に、業務での使い方のルールが紙1枚にまとまっていました。何を読ませてよくて、何はだめか。迷ったら誰に聞くか。ルールの作り方は別の記事で、ひな形付きで紹介しています。

そして、上司が研修の目的を知っていました。「研修で作ったツールを、今月の締めで使ってみて」と、上司の側から声をかけていた。これが一番効いていたと感じています。

定着した会社が、研修の後にやっていたこと

研修の後にやっていたことは、意外と地味です。

1つは、社内チャットに質問用の場所を作り、研修の講師もしばらく参加していたこと。研修直後の2週間に出る質問の数は、研修当日の質問よりずっと多くなります。

もう1つは、1か月後に30分だけ集まって、その後に作ったものを見せ合ったことです。見せ合う場があるとわかっているだけで、触る人は増えます。社内勉強会の回し方は、こちらの記事も参考になると思います。

研修を発注する前に、社内で答えておきたいこと

研修会社を選ぶより前に、社内で次の問いに答えられるかを確かめてみてください。

研修の翌日、受講者は自分の席でAIの道具を起動できるか。業務の本物のデータを、どこまで扱ってよいか決まっているか。受講者の上司は、研修で何を作ってくるかを知っているか。研修の1か月後に、誰が様子を聞くのか。

1つでも「決まっていない」があれば、研修の日程より先にそちらを決めたほうが、結果的に研修の費用が無駄になりません。

AI研修が定着しない会社への、私たちの答え

冒頭の会社とは、その後もう一度話をしました。

AI研修が定着しない原因の大半は、研修の外にあります。使える環境、使ってよい範囲、使う時間。この3つが研修の翌日に揃っていないと、どんなに良い研修でも1か月で元に戻ります。

その会社では、2回目の研修の前に、情シスと人事と受講者の上司を集めた30分の打ち合わせを入れました。研修の中身はほとんど変えていません。それでも私たちの見てきた範囲では、研修の後に使い続ける人は1回目より増えていました。人数の比較は研修先ごとの条件が違うので、ここでは控えます。

当メディアの運営会社の研修でも、研修前の環境やルールの準備から相談を受けています。